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感情が移ろい、季節が変わり、時が止まることなく流れゆく――。天児牛大は『降りくるもののなかで―とばり』において、そのストイックな詩格を大胆に変えた。ここで天児は7つのタブローの境目をたゆたう時空で融合し、生命の宇宙の輪廻天性を、止むことなく一方向に進む美しき1時間半の潮流として展開してみせる。後方からは6,600個の星々の光が降り落ちる。舞台上の楕円内では2,200個の儚き命が発光する。この無限の宇宙塵のなかに佇み、人の存在の虚しさにおののき、虚空に向かって無音の叫びを放つ天児の叙情的なソロ。喜びも哀しみも、光も闇も、生も死も、ここではその仕切りが薄衣のとばりのように柔らかに揺らいでいる。万物が交歓をかわす瞬間のつらなりにより、宇宙は静かに流れつづける。
公演評
こんなにも静かで風変わりな作品にもかかわらず、日本の振付家天児牛大がこの作品『とばり』で観客の前にその圧倒的成功を勝ち取ったことは驚嘆に値する。今日多くの主張が、保守的な人々であれ、あるいは芸術を志向する若者たちであれ、オリジナリティーを追及するこの混迷の時代にあっても、この心癒される哲学的な作品に観客は思わず見入ってしまう。それは見えざるものと対話しているようであり、またその踊りは壮麗な奇行にも思える。
ル・モンド
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